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■顧客ターゲットを絞り込む■


ショップコンセプトとショップ名がイメージできたら、次に行なうべきことは、顧客ターゲットの絞り込みです。


「ターゲット」とは「標的」とか「対象」という意味で、その語源はフランス語で「小さい円卓」という言葉からきているそうです。


「小さい円卓」と聞くと、なんとなくイメージできますよね。


【顧客ターゲットの絞り込み】というと、少し難しい感じがしますが…、

イメージとしては、【ダーツの矢】を【ダーツの的】に、めがけて投げる場面を想像していただいたらよいかと思います。


つまり、


【ダーツの矢】が、【ショップコンセプト】で、

【ダーツの的】が、【顧客ターゲット】というわけです。


コンセプトと顧客ターゲットの関係も、ちょうどダーツの矢と的の関係と同じなんですね。


的があってこそ、矢はつきささります。


無限大に広がる空間の中から、具体的な顧客の焦点をを絞って、その焦点めがけて、矢を投げこんでいく、そんなイメージです。



■顧客ターゲットの絞り込みかた■


顧客ターゲットとは、自らのショップコンセプトを訴求したい、具体的な「お客さん像」のことです。


では、どうやって、的になる顧客像の焦点を絞っていけばよいのでしょうか?


それには、以下の3点から絞り込んでいくのが一般的な方法です。


1.性別

2.年齢

3.ライフスタイル(職業、家族構成、趣味など)



大きくこの3つの要素を考えて、顧客層を絞り込んでいくわけですね。


たとえば、「女性の20代独身OL」という感じです。


これくらい絞り込むと、どのようなライフスタイルを送っているのか、好みの傾向などがおおまかに想定できるようになります。



■顧客ターゲットを絞り込むときの注意点■


この顧客ターゲットを設定する際に、セレクトショップなどのファッション製品を扱うビジネスでは、ちょっと注意しなければいけないことがあるのです。


食品などの必需品を扱うビジネスと違い、ファッション製品を扱うファッションビジネスでは、流行トレンドの存在が特徴としてあげられます。


要するに、商品に「ハヤリスタリ」があるわけですね。


そして、この流行トレンドの伝わり方には、顧客のタイプによって違いが生じてくきます。


私たちの周りを見てもそうですよね、流行に敏感な人もいれば、無頓着な人もいます。


ファッションビジネスにとっては、いかにして流行トレンドをつくりだし、それに上手に乗っていけるかどうかが、ビジネスの成否を決める要因といっても過言ではありません。


ですから、性別や年齢やライフスタイルで絞り込んだ顧客ターゲットを、さらに、流行トレンドの取り入れ方に応じて絞り込んでいく必要があるのです。


この流行の取り入れ方の違いの参考になるのが、「ロジャースのイノベーション普及理論」と呼ばれているものです。


どのような理論か、簡単にご紹介しますと…。



■ロジャースのイノベーション普及理論■


「ロジャースのイノベーション普及理論」とは、新しいアイデアや行動様式などの「イノベーション」がどのようにして人々の間に普及していくかを理論化したものです。


トレンドもひとつの「イノベーション」ですから、「ロジャースのイノベーション普及理論」に従っていくと考えられます。


具体的には、以下の5つのプロセスで順番にトレンドが採用されていくことになります。


1.革新者(innovators) 全体との比率:2.5%

革新者とは、新しいアイデアや行動様式を最初に採用する人々のことで、社会の大部分の人々がイノベーションを採用しない前に、採用に踏みきります。

いわゆる「新しもの好き」の冒険者です。



2.初期採用者(early adopters) 13.5%

初期採用者は、新しい情報の進取の気性に富んでいるが、革新者に比べて社会的常識に対する統合度が高く、新しいアイデアや行動様式に価値があるかを判断した上で採用します。

社会的に尊敬される立場の人も多く、最高度のオピニオン・リーダーです。



3.前期多数採用者(early majority) 34%

前期多数採用者は、その他の平均メンバーが採用する直前にイノベーションを採用します。

初期採用者が採用して良い評価を行った場合に、新しいアイデアや行動様式に追随していく人々のことです。



4.後期多数採用者(late majority) 34%

後期多数採用者は、社会の平均的メンバーが採用した直後にイノベーションを採用します。

新しいアイデアや行動様式に関して確信を抱いた後も、まわりの様子を見た上で、追随していく大勢順応型の人々のことです。



5.遅滞者(laggards) 16%

遅滞者とは、保守的で変化を好まない特性をもち、最後までイノベーションを採用しない、伝統志向的な人々のことです。



この「ロジャースのイノベーション普及理論」を、顧客ターゲットにあてはめて考えてみると…、


先ほど例としてあげた、「女性の20代独身OL」とひとくちにいっても、「流行トレンドへの感度」には、タイプによって大きく差があることがわかります。


「流行トレンドの採用感度」によって、顧客ターゲットは、さらに3タイプに細分化できるのです。



■3つの顧客ターゲット■


流行トレンドへの感度によって細分化された顧客ターゲットを3つに区分し、それぞれ、


【イメージターゲット】 【リードターゲット】 【リアルターゲット】


と呼んでいます。





そして、それぞれの特徴としては、以下のようになります。


1.イメージターゲット

イメージターゲットとは、普及理論での革新者にあたり、常に新たなトレンドを追いかけている層のことで、一部のお金持ちや芸能人などがこれに該当します。

たとえば、「セレブ」といわれる人々、ファッションリーダーの「安室奈美恵」さんなどが、イメージターゲットの代表ですね。



2.リードターゲット

リードターゲットとは、普及理論での初期採用者にあたり、イメージターゲットのスタイルを取り入れ、トレンドを形成することに価値を感じている層で、最もトレンド情報に敏感な人々のことです。

よく雑誌に登場する「読者モデル」などがこのリードターゲットの代表といえます。



3.リアルターゲット

リアルターゲットとは、実際に店頭で商品を購入する層のことです。

つまり、ショップに来てくれる「お客さん」のことですね。



ファッションビジネスで顧客ターゲットを絞り込む際には、この3つのターゲットのうちのいずれかを、顧客ターゲットとして狙いを定めることになります。


では、セレクトショップを開業するにあたって、以上3つのターゲットのうち、いったい、どの層を顧客ターゲットとするべきなのでしょうか?


1.イメージターゲットでしょうか?

2.リードターゲットでしょうか?

それとも、3.リアルターゲットでしょうか?


どれだと思われますか?



■ファッションビジネスでの顧客ターゲットとは■


正解は、2.リードターゲットなんです。


「3.リアルターゲット」が、実際の購買者の大多数を占めることから、ここにターゲット設定してしまう場合が多いので注意してくださいね。


セレクトショップなど、ファッションビジネスに該当するビジネスの場合、自店の訴求ターゲットとして、「リードターゲット」に狙いを定めなくてはいけないのです。


なぜかというと、ファッションビジネスの製品は、消費者の視点からみれば、「私は人とちょっと違うのよ!」という、自分と他人とを差別化したい欲求を、満たしてくれるものでなければなりません。


消費者はいつもの自分を、「ちょっと変身」させたいと思うからこそ、ファッション製品を欲しいと思うのです。


ですから、いまの自分より「半歩先のファッション」に心が動かされます。


それなのに、リアルターゲットを顧客ターゲットに設定して、リアルにそのニーズに訴求しても、購買動機を刺激することができません。


また、「1.イメージターゲット」への訴求は、この層の特性からみて、各店舗でのディスプレーなどにより、購買につながる場合は、現実問題としてまずありえません。

(だってこの人たちはショップに来ないでしょう?)


ですから、顧客ターゲットとしては、リードターゲットに設定し、この層をいかにして惹きつけるかを考えていかなければなりません。


リードターゲットを惹きつけることができれば、その追随層であるリアルターゲットは、自然とそのショップに惹きつけられてきます。


ですから、ファッションビジネスにおける顧客ターゲットとは、

【リードターゲット】のことだと、憶えておいてくださいね。



■ターゲットプロファイリング■


では、顧客ターゲットに設定した、リードターゲットに対して、どのように訴求していけばいいのでしょうか?


そのためにまず行なうことが、「ターゲットプロファイリング」という手法です。


ターゲットプロファイリングとは、自分のショップにとってのリードターゲット層が、どのような嗜好性を持ち、どのようなライフスタイルを持っているのかを、イメージいく手法のことです。


たとえば、先ほどあげた「女性の20代独身OL」をプロファイリングしてみると、下のようになります。


■ターゲットプロファイリングの一例■

年齢 26歳
職業 大手アパレルメーカーの役員秘書
年収 約450万円
学歴 県立高校卒業後、四年制の私立大学を卒業。
家族構成 父:中堅企業の部長
母:専業主婦
妹:私立大学3回生
両親、妹と同居している。
居住地域 阪急沿線 夙川の庭付き一戸建て 
ファッションスタイル 流行には敏感だが、むやみにトレンドを追いかけることはない。
キレイめカジュアルコーディネイトが好き。
ブランドにはこだわらないが上質感にはこだわる。
食生活スタイル 昼は社員食堂、夕食は友人たちと外食することが多い。
イタリアンが好き。
インテリアのスタイル ナチュラルモダンなインテリアが好み。
最近は北欧家具に興味あり。
趣味など 趣味は食べ歩き、映画、海外旅行。
最近は英会話教室とスポーツクラブに通いはじめた。
よく読む雑誌 「オッジ」、「クラッシー」、「日経ウーマン」。
よく見るテレビ NHKの深夜ドラマ、昔の映画のDVD。
よく行く場所 神戸元町、三宮、北野界隈で食事とショッピング。


このように具体的な人物像を書き出してみると、リードターゲットのイメージがより鮮明になりますよね。


このように、ターゲットプロファイリングによって、顧客ターゲットの具体像をより明確にしていきます。



■イメージコラージュ■


次に、ターゲットプロファイリングで明らかになった、顧客ターゲットのプロファイルを、ビジュアル(視覚的)に表現していきます。


この作業が、「イメージコラージュ」と呼ばれているものです。


ターゲットのライフスタイル、ファッション住環境や食生活を、雑誌の切り抜きや、スナップ写真を貼りつけて、一目で分かるようなビジュアル資料につくりあげていきます。


「リードターゲット」の「ターゲットプロファイリング」と「イメージコラージュ」を行なってみると、明確な顧客イメージを描くことができるようになり、顧客ターゲットとして絞り込みができるようになるわけです。


難しいかもしれませんが、顧客ターゲットの絞り込みはキッチリやっておいてくださいね。


 
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